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「十二人の怒れる男」 [映画]


十二人の怒れる男 [Blu-ray]

十二人の怒れる男 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
17歳の少年が起こした殺人事件に関する陪審員の審議が始まった。誰が見ても彼の有罪は決定的であったが、一人の陪審員は無罪を主張。そして物語は思わぬ展開に!

この名作を観ていなかったので、
スカパー!で放映していたのを録画して。

日本でも裁判員制度が始まって、
実際に裁判員を務めた人のPTSDなども問題になっている昨今、
人間が同じ人間の有罪無罪、
事によっては命を奪うことまで決めてしまう制度。
一見民主的に見えるけれど、
人間は感情の動物だから決して必ずしも公平などあり得ない。

最初から「有罪、死刑」と決め込んでいた陪審員たちに、
ヘンリー・フォンダが投げかけた疑問から、
様々な検証の手落ちや気付きが陪審員の気持ちを揺るがせて。

陪審員一人ひとりは善人だし、
別に犯人に個人的恨みや憎しみがあるわけじゃない。
ただ仕事としてこなそうとしているだけ。
いろいろな証言や物証から「有罪」と決めているのも当然。
それを丁寧に検証していったときに、
浮かび上がってくる思い込みや足りない検証。
密室で行われる12人の男たちの心理劇でもあり、
杜撰な捜査や弁護による冤罪への警告でもあり、
実に見事に凝縮された濃密な作品。

派手さはないけれど、
名作と呼ばれるにふさわしい一作。
未見の方は是非とも。

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「エイリアン:コヴェナント」 [映画]








これを実は「エイリアン」シリーズと知らなくて、
観ていなかった人たちが観たら、
全然わからなかったんじゃないかなぁ。
と言うか、
まさかあの完全無欠で凶悪なエイリアンを作り上げたのが、
○○○だったなんて・・・。
「プロメテウス」を観ていないと理解できないだろうなぁ。

リドリー・スコットはどうしても、
ただ不思議な生物としてのエイリアンを描くだけじゃなくて、
最初のエイリアンに登場したパイロットの秘密や、
エイリアン誕生秘話を描きたかったのだろう。
不幸にして「プロメテウス」がエイリアンシリーズだと宣伝充分ではなく、
日本では散々な吹き替えによって悪評紛々、
「エイリアン誕生の秘密」という宣伝文句だけで観たら、
せっかくの世界が台無しという不遇さ。
同情してやまない。

しかし相変わらずリドリー・スコットの力は衰えず。
最初の「エイリアン」ほどの緊迫感はないけれど、
アレはスペースアクションホラーの大傑作であって、
今回はそこに至るまでの、
「プロメテウス」と「エイリアン」までの間を埋める、
大事な恐ろしい現実を描いているわけで、
むしろ一番恐ろしいのは、
冒頭に登場するウェイランドであり、
彼こそが諸悪の根源なのだと言うことである。
彼が○○○を作り出さなければ、
ノストロモ号の悲劇もリプリーのその後の悲劇もなかった。

シリーズものの面白さとか、
相関関係をネタバレなしに語るのは難しい。
しかしリドリー・スコットは40年掛けて、
シリーズの落とし前をつけたわけで、
次はどうやら「ブレードランナー」の落とし前をつけるらしい。

老いてなお意気盛んな監督の情熱は、
イヤと言うほど伝わってくるので、
満足感はものすごく高い。


とはいえ、
終映後の客の会話を聴いていたら、
「わかっていないなぁ」って言う人もかなりいたので、
TVで「エイリアンシリーズ」観たから観たい、
って言う人にはちょっとキツイかも。
Amazonビデオで100円で観られるので、
とにかく「プロメテウス」を観ておいた方が良い。
因みにスピンオフのプレデターと戦っちゃうヤツとかは、
全部なかったことにして良いからw。


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「エレファント・マン」 [映画]


エレファント・マン [Blu-ray]

エレファント・マン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • メディア: Blu-ray


内容(「キネマ旬報社」データベースより)
デイヴィッド・リンチ監督が手掛けた実話に基づくヒューマンドラマ。19世紀末のロンドンを舞台に、特異な容姿から“エレファント・マン”と呼ばれた男・メリックと主治医との交流を描く。“KADOKAWA 洋画セレクション”。

大号泣。
リンチ特有のフリークス趣味だと思っていたので、
その底辺にあるヒューマニズムと、
人間の醜さに心の底から震撼。

以前にも書いたことがあるが、
私は中学から20歳で母親が亡くなるまで、
リウマチで指や足が変形した母と行動を共にしていた。
もちろんそんな状態だから、
美意識の高かった母親は外出を好まなかったが、
それでも病院にも行かなければならないし、
何かと車椅子を押しながら外出はしていた。
そんなとき年齢の高い人ほど、
嫌悪感と醜いものを観る表情を露骨に見せた。
今ほど街はバリアフリーではなく、
車椅子で移動するのはかなり大変だった。
そんなとき手を貸してくれるのは、
いつも若い人だった。
学生さんやOLさん。
年配の女性はともかく、
男性も手を貸してくれる人はいなかった。
もう30年以上も前の話だから仕方ないのだが、
当時は身障者には本当につらい時代だった。
でも「あん」を読んで映画を観たとき、
年配の人たちの心の中に「ハンセン氏病」があったのではないか、
そのことにはたと思い当たった。
だから汚れたものを観るような目をしていたのでないか。
若い人たちにはそんな偏見や知識がないからこそ、
純粋に手を貸してくれたのではないか。
そんな思いが去来した。

この映画を観て、
その思いをちょっと思い出したが、
それ以前に理解できないもの、醜いものへの本能的嫌悪感や、
良い意味ではない好奇心や優越感、
むしろ人間誰しも持つそんな感情に思い当たった。
自分を見世物にすることでしか生きられなかったジョンが、
彼を人間として扱ってくれて、
美しいものに触れることを許されて、
美しいものを愛することを覚え、
人間として生きることに目覚めたとき、
彼は愛してくれる人たちに最大の感謝の念を抱き、
彼の夢見ていたことを実行する。
それがあのラストシーンなのだが、
彼の心を思ったら涙が止まらなかった。
彼の人生の大半はつらく苦しいものだっただろうが、
その苦しんだ分と同じくらいの幸せと感謝、
彼はその晩年で充分過ぎるほどに感じたのだろう。

しかし昔も今も変わらないのだなと思うのは、
病院の考え方だ。
急性期の患者のためにベッドはあるのであって、
慢性期の患者をベッドにおいては置けない。
それは至極当然のことなのだけど、
この考え方を続ける限り、
今の医療の在り方も変わらない。

境遇も生き方も何もかもが違うけれど、
あんな風に美しいものを素直に愛でて、
自分を大切にしてくれた人たちへの感謝に満ちて、
何もかも満ち足りた気分で死の床につきたいものである。

ああ、何度思い出しても涙がこみ上げてくる。



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「イット・フォローズ」 [映画]


イット・フォローズ [Blu-ray]

イット・フォローズ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: Blu-ray


[内容解説]
19歳のジェイは男と一夜をともにするが、その後、男が豹変。縛り付けられたジェイは「“それ"に殺される前に誰かにうつせ」と命令される。
“それ"は人にうつすことができる。
“それ"はうつされた者にしか見えない。
“それ"はゆっくりと歩いて近づいてくる。
“それ"はうつした相手が死んだら自分に戻ってくる。
そして、“それ"に捕まったら必ず死が待っている。
果たしてジェイは、いつ、どこで現れるかわからない“それ"の恐怖から逃げきることが出来るのか―。

WOWOWでの放送を見つけ、
「あ、町山さんが前に紹介していたっけ」と思いだして。

怖いっす。
「それ」は感染者にしか見えなくて、
それもどんな姿で現れるかわからなくて、
ただひたすらゆっくりひたひたと近づいてくる。
そしてそれから逃れるには、
セックスで誰かにうつすしかない。
うらぶれたデトロイトの街で、
ティーンエイジャーたちが、
何とか「それ」から主人公を救うべく、
「それ」から逃げるのだけど、
「それ」は感染者にしか見えないから、
周りは何かが起こってからしか行動が起こせない。
いつどこから現れるかわからないから、
安息の時はない。

単純なホラーのようで、
深読みしていくと結構面白い。
カメラワークやちょっとした物音、
けっこう尻軽な主人公、
で、「それ」をうつすわけにはいかないから、
本当にしたい人とセックスはできない。
娼婦の姿を映すシーンがあるんだけど、
この娼婦が殺されちゃったら、
また自分に戻ってくるから、
事情を理解できる人間にしかうつせない。
つまりワクチンのないウィルスを、
自分が助かるために感染させ続けるエンドレス。
「殺される前にやって感染させていけ」
これは何を暗喩しているのか。

今の時代で考えると、
「ずぶずぶ」の関係がこれかも知れませんな。
「やられる前にやれ」
だけどやられたらやり返すことはできない。
これぞエンドレスな軍産複合体とか、
原発の仕組みにも似ていますな。

もっとも監督はそこまで政治的な事は考えていないみたい。
何を考えるかは観た人の自由と言うことで。

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「3月のライオン後編」 [映画]



初日初回上映が8:20!
今なら行けるから行ってきました。
余りにも前編が良くできていたので、
後編がどうなるのか知りたくて。

結論。
もう感動です。
前編が桐山君が生きる将棋の世界が、
どれほど緊張感を強いられて、
どれほど過酷な世界なのかを描いたのに対して、
後編はそれを踏まえた上で、
桐山君が生活する世界が、
如何に愛に満ちていて光ある世界か、
桐山君が目を開いて素直に受け入れる物語。
ひなたちゃんのいじめ問題も、
うまくはしょりながら織り込んでいて、
桐山君の「守りたい」という気持ちに火をつける。
「将棋しかねぇんだよ!」と叫んでいた少年が、
自分の身の回りにあふれる愛に気付いて、
人との関わりと愛情にやっと踏み出していく。

しかし。

いつものことながら、
伊藤英明、好きじゃないんだけど、
彼が出ると彼の映画ができちゃうのがスゴイ。
今回も微妙な役どころだったけど、
ちゃんと一つのEpisodeの主人公なんだよね。
そして神木君には悪いけど、
やっぱり並ぶと絵としては持って行かれちゃう。

高橋一生の先生も適役だったねー。
佐々木蔵之介も特殊メイクしているのかと思うほどだし、
誰も彼もが原作の世界を壊さないまま、
存在感を残しているのはさすが。

そして台詞が極端に少ない加瀬亮。
スゴイです。
「アウトレイジ」観た時から、
「あ、この人、今まで良い人ばっかり演じてきたけど、
 含みのある役柄やらせるとすごいわ」と思っていたけれど、
今回も少ない台詞ながら、
スッとした静かな佇まいの中に見せる苦悩とか、
ちょっとした狂気にも似た天才ぶりとか、
「これだけで演じちゃうんだぁ」って感心しきり。

マンガの方はまだ終わっていないんだけど、
映画のあの終わり方も良かったし、
羽海野チカ先生も満足しているんじゃないかな。
何よりも原作の雰囲気を全然壊さないで、
実写映画化したって言うのは奇跡だし、
実際の俳優が演じるからこその凄味ってものを、
伊藤英明、佐々木蔵之介、加瀬亮から感じました。

マンガのドラマ化や映画化が多くて、
中には「大奥」みたいに分断したが故に、
どうしようもなくつまんなくなっちゃったものもあるけれど、
志あるスタッフと役者に恵まれると、
こんなに素晴らしい作品ができるんだという見本のような作品。

今の私には、
「自分の中で作り上げた化け物に負けるな」という、
豊川悦司の台詞が強烈に響きました。

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「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」 [映画]



おすぎさんお薦めだから期待していたんだけどなぁ。

実在の人物を演じることの難しさ、
ナタリー・ポートマンはナタリー・ポートマンにしか見えなくて、
もう少し似ている人いなかったの?って感じ。
思えばおすぎさんお薦めで観た「アンナ・カレーニナ」も、
全然女として共感できなかったし、
おすぎさんとの年齢差と、
おすぎさんの方が「女」って事なのかもね。

話としては、
まだ何も実績を残していない大統領の暗殺に際して、
その大統領が殺されたことが如何に損失であるか、
或いはどれほどの罪を犯したのか、
要するに実物の大統領の実績以上に、
その葬式で「偉大さ」を演出することが未亡人の勤めだったと。
実際の報道映像を観ているものとしては、
「小さな子供たち」の父親を奪われて、
これから偉大な仕事をするはずだった大統領を殺されて、
「こんなに大変なことをしてくれた」という演出、
わかるけどわからない。
なんか未亡人として夫を如何に大きく見せるか、
その自尊心とか見栄とか、
そんなものばっかりが気になっちゃって。

ナタリー・ポートマンはよく頑張っているんだけど、
あの独特のジャッキーの存在感には遠く及ばず。
似てはいないけど、
シャーリーズ・セロンあたりがやった方が、
もっと腹の据わったジャッキーになった気がする。

私たちは歴史としてケネディ家の悲劇も知っているし、
暗殺当時幼女だったキャサリンがその後日本に来ることも知っている。
それだけになんとなく醒めてみているところもあるかも。

因みに観客は60歳以上の夫婦連れが多かったです。
おそらくあの中継をリアルタイムで観ていた人たち。
日本の若者は興味ないだろうなぁ。

政治的駆け引きやケネディ家としての尊厳とか、
いろんなものが交錯して、
けっこうお腹いっぱいで辟易する瞬間あり。
これも万人には勧めないです。


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「レヴェナント:蘇えりし者」 [映画]


レヴェナント:蘇えりし者 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]

レヴェナント:蘇えりし者 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
1823年、毛皮ハンターの一団はアメリカ西部の未開拓地を進んでいた。隊長のヘンリーを先頭に、ガイド役のヒュー・グラスとその息子のホーク、そしてグラスに対して敵意を抱いているフィッツジェラルドたち一行だったが、ある時、先住民に襲撃され多くの犠牲者を出す事態に。生き残ったグラスたちは危険な川を避け、船を捨てて陸路で砦に戻ろうとするが、グラスは巨大な熊に襲われて瀕死の重傷を負ってしまう。隊長のヘンリーは余命わずかに見えるグラスを残して行くことを決断。息子のホーク、金に釣られて居残ることにしたフィッツジェラルド達にグラスの最期を看取るよう命じるが……。

ディカプリオが念願のアカデミー主演男優賞を取った一作。
ということで、
かなり期待して覚悟して観たわけだけど。

撮影は非常に美しい。
自然光に拘ったと言われているが、
その分観にくい映像もあるが、
極寒の土地で繰り広げられる、
その厳しさと容赦ない自然がハンパなく伝わる。

ディカプリオの演技も素晴らしい。
台詞も少なく、
まさしく身体で演じる役柄であるが、
ベジタリアンの彼が生の動物の内臓や魚を貪ったり、
極寒の大地を傷付いた身体を執念で動かし、
自分を見捨てて息子を殺した男への復讐へと向かう。
その鬼気迫る演技は見事。

ただし、ストーリーは凡庸。
町山さん言う所の「熊に喰われた男」が一番わかりやすいのだが、
そこから執念で甦って息子の復讐をする。
大自然の中生き延びるために様々な事は起こるしするけれど、
所詮はストーリーの一部であり、
取り立てて政治的なメッセージも感じず、
単純に「熊に喰われた男」の復讐劇。
日本人には当時の時代背景がわからないし、
先住民と所謂アメリカ人との関係やら、
毛皮商人とか先住民との間に子供を作った主人公の立場とか、
全く説明がないので理解しにくい。
普通に観れば執念の復讐である。
こう言う物語の場合、
先住民特有の考え方や暮らし方、
彼らなりの倫理や論理が登場するのだが、
そのあたりも中途半端なままでよくわからない。

壮大な一作ではあるし、
長尺を退屈させずに観させる力はあるが、
「傑作」かと問われれば個人的にはNOである。

同じ復讐劇なら、
「デスペラード」の方が余程わかりやすく、
爽快感がありつつも皮肉もあり、
決して大作ではないが傑作と言える。

まぁレオ様が頑張っているので、
今までいくら汚れ役をやって頑張っても、
意外性のある役で頑張っても取れなかったオスカーを取った記念として、
観ておくのも一興かと。
あ、撮影の素晴らしさはちょっとしたものなので、
それだけは褒めておきます。

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「LION/ライオン ~25年目のただいま~」 [映画]



大阪で同性カップルが里親になったことが話題になった今、
この物語の里親たちが、
オーストラリア、それもタスマニア島に住んでいながら、
なぜインドから子供たちを引き取ったのか、
その理由を語るニコール・キッドマン演じる母親の気持ちに、
一気に持って行かれるものがあった。

貧しい少年サルーが偶然の巡り合わせで、
故郷から遙か遠いカルカッタへ行ってしまい、
言葉も通じず当然頼る人もなく、
路上生活をしていたところを保護され、
オーストラリアに住む里親夫妻に引き取られる。
後に同じインドから義兄弟となる少年がやってくるが、
彼は癇癪持ちであり問題児だった。
その状況をくみ取ったサルーは、
模範的な青年として成長する。
しかしあるパーティーをきっかけに、
彼は自分が迷子であったことを思いだし、
出身地はカルカッタではなくて、
遙か離れた土地であり名前すらうろ覚えであることに気付く。
残された鮮烈な記憶は、
故郷の駅前にあった給水塔。
その日から彼はとりつかれたようにGoogle Earthを使い、
それらしい場所を探しにかかる。
仕事も投げ出して。

彼がなぜそれほどまでに過去にとりつかれたのか、
今の私にはわかる気がする。
自分を探しているであろう家族の存在とともに、
「本当の自分」を探し出したくてたまらなかったのだと思う。
今の私は病気によって「本当の自分」がわからなくなっている。
バリバリ営業で外回りしていた頃には思ったこともない思考が渦巻き、
何もかもが前向きに考えられていた自分が本当なのか、
それとも今の自分が本当なのか、
どちらも本当の自分なのか。
まさしく「人生の迷子」状態だから。

しかしこの映画、
タイトルの「LION」の意味が全然わからず、
物語に引き込まれて、
それぞれの登場人物に感情移入しながらも、
その謎が引っかかりながら観ていた。

そしてラストにその意味が明かされたとき、
滂沱の号泣。
そりゃ迷子にもなるよねって思いと、
家族という群を持つ唯一のネコ科の動物であるLION、
その意味を考えてしまう。

それにしてもニコール・キッドマン、
全然いつもの色気や美しさを隠して、
普通の主婦として演じている様は見事。
控えめで思いやり深くて優しい母親だからこそ、
里子たちは母親を苦しめたくなくて、
それぞれが選んだ道を進む。
その方向が違ったとしても、
彼らはその愛を充分に享受し理解している。
そしてサルーをインドに送り出すとき、
彼女は心引き裂かれんばかりの思いだろうに、
ちゃんと慈悲深く本当の家族に合えるように送り出す。
いや~、ニコール・キッドマンスゴイ。

これが実話だというのだから、
まったく世の中には実に信じられない物語があるものである。

幸せに暮らしているのに、
なぜ主人公が過去にとらわれて、
執念で探し出すのか理解できない人もいるだろう。
「今が幸せなんだから良いじゃない」
「25年も経っているんだから向こうだって忘れているよ」
そう思う人もいるだろう。
けれど先述したとおり、
彼は「本当の自分」「本当の家族」を知りたかったのだろう。
それは理屈ではなくて、
今の自分が幸せであるから良いのではなく、
あの貧しかった家族がどうなったか、
成長した自分にできることはないのか、
いろいろな思いに駆られて止まらなかったのだろう。

心理療法士によるカウンセリングにも似ている。
自分が封印した記憶や体験を掘り起こし、
それが今の自分を作っていることを認めながら、
それにどう対峙していくか。
自分が迷子として保護されて、
里子としてオーストラリアに引き取られ、
本当の家族がインドにいるとわかったときに、
彼が取った行動は非常に理解できる。

エンドロールが終わる前に席を立たないで欲しい。
最後の最後まで物語は続くから。
そして彼の物語は今も続いているから。

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「ムーンライト」 [映画]



決してアカデミー作品賞を取ったからではなくて、
いとうせいこうさんがアカデミー賞前に絶賛していたから。

ものすごく大人な映画。
ドラッグ、人種問題、LGBT、いじめ、
問題が詰め込まれた作品。
だからわかりやすい笑いや感動ではなくて、
後からじわりじわりと、
思い返して心にしみてくる映画。

アカデミー賞としては、
「ラ・ラ・ランド」の方がわかりやすかっただろうけど、
こっちの方が余程重みがあるし、
ものすごくアメリカの今を切り取った凄さがある。
この映画をプロデュースしたのがブラピ。
けっこうどうでも良いような映画に出て稼ぎながら、
こう言う映画を作ることにめざといところが、
ただの俳優じゃない凄さ。

派手な映画が好きない人には?だろうけど、
こう言う映画をじっくり観るものまた一興。
良い映画だとは思うんだけど、
万人向けじゃないのは残念。

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「ズートピア」 [映画]


ズートピア MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]

ズートピア MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
動物たちの“楽園"ズートピアで、ウサギとして初の警察官になったジュディ。でも、ひとつだけ問題が…。警察官になるのは通常、クマやカバのように大きくてタフな動物たちで、小さく可愛らしすぎる彼女は半人前扱いなのだ。だが、ついにジュディも捜査に参加するチャンスが! ただし、与えられた時間はたった48時間。失敗したらクビで、彼女の夢も消えてしまう…。頼みの綱は、事件の手がかりを握るサギ師のキツネ、ニックだけ。最も相棒にふさわしくない二人は、互いにダマしダマされながら、ある行方不明事件の捜査を開始。だが、その事件の背後にはズートピアを狙う陰謀が隠されていた…。

なるほどなぁ。
子供なら単純に動物を擬人化した物語として愉しめて、
深読みする大人なら、
人種問題と読み替えて愉しめる。
肉食動物も草食動物も、
大きくても小さくても、
それぞれの生きる道を選べて生きていけるズートピア、
それをアメリカに置き換えれば、
それぞれの動物たちの立場がよくわかる。
白人、黒人、ヒスパニック、ユダヤ人、東洋人、
それぞれの特徴が表現している。
そこは楽園などではなくて、
実は何気なく虐げられた人々が不満を募らせ、
一発逆転を狙う世界。

単純にアニメとして楽しみたいときは、
何も考えなければ良いし、
深い意味を考えながら、
今のアメリカの在り方に思いをはせるも良し、
いろいろな愉しみ方ができる作品。

今のアニメ作品は、
単純に一面的に観られるだけじゃ成立しない。
おそらくウォルト・ディズニーがいた頃は、
もっともっと差別的だっただろうし、
何しろ国威発揚アニメまで作った人だから、
今とは全くスタジオの雰囲気も違ったのだろう。

「この世界の片隅に」同様、
アニメと思わずに観た方が良い作品が増えている。
これは表現の多様化でもあり、
アニメならではの表現でもあり、
とても良い方向性だと思う。
子供から大人まで、
それぞれの立場での愉しみ方、
それって最高に良くできた映画だ。


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- 人生は四十七から -